集合的無意識とは、心理学者のユングが考えたことばです。
集合的無意識は、人類に共通するこころの土台のことです。
この記事では、次のことがわかります!
・心理学に全然くわしくない人でも、集合的無意識のことがざっくりわかる!
集合的無意識(普遍的無意識)とは、人類に共通するこころの土台のこと
ユングは、無意識の中を、個人的無意識と、集合的無意識というふたつの層に分けて考えました。
個人的無意識の中には、個人的に嫌だった記憶や忘れたいものごとなどが隠されていきます。嫌なことやつらいことは、ふだん思い出さないようにしまってあるのです。嫌なことが強いと、別の人格が個人的無意識の中に存在することもあります。
いっぽう、集合的無意識は、心全体の中で個人的体験ではないものを指し、元型で構成されています。ユングは、「人が生まれたときからそう感じるようなパターン」があって、誰からも教えられていないのに、なぜかみんなが同じように感じる共通点があるとユングは考えました。それは、現代の合理的な社会に生きる人から見たら、非科学的な内容が多いのですが、人間が自分が生きる物語を生きやすくするようなものです。神話をつくるような心の層、ともいうことができます。
集合的無意識は、人生の適切な時期に立ち現れてきます。元型は自律性があり「自分の意識や意志の力では自由にならないもの」ともユングは言っています。よくも悪くも自動的に立ち上がってくる集合的無意識に気づき、自分が舵をとり人生の意味に向き合っていくことが大切なのです。
元型の解説はこちら
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フロイトは無意識はひとつだと考え、ユングは無意識はふたつあると考えた理由
ユングの先輩フロイトは、無意識はひとつだと考えた
ユングの先輩フロイトは、無意識はひとつだと考えました。
フロイトは、幼児期の過去にほとんどのトラウマの原因があると考えました。これは、フロイトが解離性障害や、強迫性障害の患者を多く診て来たからかもしれません。
解離性障害とは
強迫性障害とは
ユングは統合失調症の患者の言動から、集合的無意識を考えた
いっぽう、ユングは統合失調症の患者さんを多く診てきました。この中で、過去のトラウマだけでは説明しきれないことがあったのです。
統合失調症とは
ユングはいろいろな患者さんと接するなかで、個人の無意識とは関係ないものが夢や患者さんの妄想に出てくることに気づいたのです。それは、神話やおとぎ話にも似ていることが多くて、「これはもしかしたら、人類共通のなにかがあるのかもしれない」と考えたのです。
それが「集合的無意識」です。
ユングは、患者さんの妄想は、「自分自身を世界に適応させるための、新しい世界観を創造する途中の段階として必要なのだ」と考えました。
そして、神話によって生きているネイティブ・アメリカンの人たちの言い伝えや、おとぎ話に出てくるパターンとにているものがあったのです。
集合的無意識がなくなると人生の意味が見いだせなくなる
ユングは、現代人は神話のような深層をなくしてしまい、そのために自分にとって人生が意味や意義がなくなっていると考えていました。
現代のわたしたちにとって生きやすくなる、集合的無意識を自分でみつけ、不要な集合的無意識に気づき、自分の中でバランスをとることで生きやすくなるのではないかなと、私は思っています。
集合的無意識のわかりやすい例:世界各地にある英雄神話
ユングやその弟子が研究した「英雄神話」は、世界のどの文化でもとてもよく似ています。
英雄神話とは
たいてい貧しい少年が、冒険の使命を受け、家を出ていき、危険に直面し、竜や怪物とたたかい、その勇気に対して王座と美しい花嫁でむくいられるというストーリーです。現代のヒーローものの映画や漫画でもよく出てくるパターンですね。
人間は、無力な子どもとして、人生を生きなければなりません。両親や他の大人から解放され、人生とその挑戦に一人で立ち向かっていかなければなりません。それができないと、わたしたちは世界に地位を得ることも、パートナーを得ることもむずかしいでしょう。竜によって殺されてしまうこともあるかもしれません。物語は「母なる竜」の恐ろしさを描いているものもあります。
そのような人の心理学的発達は、世界を問わず似ているため、このような話が世界中にあるのでしょう。
ユングは人がありのままでいられる「個性化」を目指した
ユングは、ひとびとが個人的無意識や集合的無意識と向き合い、自分に取り入れていくことで「個性化」し、「自己実現」することを目指していました。
「個性化」とは、個人が自分勝手に生きることではなく、不当な影響から解放され、自分自身の内面の成長にこころを向けることです。
特に40歳をすぎてからの人生において、円満な人格を得ていくプロセスを、ユングは研究しました。
ユングは心理的・精神的にバランスのとれた最高の状態をセルフ(自己)と呼び、セルフの状態になることを「自己実現」としています。
ユングによると、自己実現には男性と女性とで違いがあるそうです。
男性の場合の自己実現の過程
シャドウ(自分の影の部分)との統合→自分の中の女性性アニマとの統合→精神的原理としての老賢者(オールド・ワイズマン)との統合→セルフ(自己)
女性の場合の自己実現の過程
シャドウ(自分の影の部分)との統合→自分の中の男性性アニムスとの統合→物質原理としての太母(グレート・マザー)との統合→セルフ(自己)
ユング心理学ってどんな心理学?と知りたい方には、こちらの本がおすすめです!現在のユング心理学の立ち位置や、自分を見つめなおす方法がわかりやすく解説されています。
まとめ
集合的無意識(普遍的無意識)とは、人類に共通するこころの土台のことでした。
ユングは、無意識の中を、個人的無意識と、集合的無意識というふたつの層に分けており、集合的無意識が、人生の意味を見出すものだと考えていました。
そのためには、自分のシャドウとバランスをとり、自分の中の異性ともバランスをとり、男性なら権力などに巻き込まれないようバランスをとり、女性なら母として子どもを支配しすぎないようバランスをとっていくことが大事でした。
そして、最終的に精神的にバランスのとれたセルフ(自己)になっていくことを目指したのです。