この記事を読むと次のことがわかります!
- 風景構成法のやり方がわかる
- 風景構成法の解釈の仕方、絵の見方がわかる
風景構成法は、こころの状態がストレートに出てしまいます。ですので、心理的安全性がとても大切です。誰かに描いてもらって、「あなたは○○なんだね」と決めつけるようなやり方は絶対にしないようにしましょう。
風景構成法のやり方とは?7ステップで解説します
風景構成法のやり方を紹介します。
用意するもの
- サインペン
- 画用紙
- 色鉛筆かクレヨン
step
1セラピストが、クライエントへ質問する
- 今回相談したいテーマ(主訴)は何か?
- 問題の状況はどうか?
- クライエントの家族歴・生育歴
step
2セラピストが、クライエントの前で画用紙にサインペンで枠を描きます。
step
3クライエントにサインペンを渡します。
「今から私がいうものを、ひとつひとつ唱えるそばから、この枠の中に描き込んで、全体としてひとつの風景になるようにしてください」と言います。
絵のうまいか下手かを見るわけではないことを伝えましょう。
step
4次の順番で、クライエントにサインペンで絵を描いてもらいます。
- 川→山→田→道
- 家→木→人
- 花→動物→石→足りないと思うもの、描きたしたいものを描いてもらう
step
5クライエントがペンでモチーフを描き終わったら、彩色してもらう
「これでよいでしょうか?」と確認し、色鉛筆などで彩色してもらいます。
step
6クライエントに必要に応じて質問をする
- 季節・時刻・天気・川の流れの方向はどちら向きか?
- 人は何をしているか?人と家はどのような関係があるか?付け足したシンボルは何か?
step
7絵を見ながらクライエントにカウンセリングを行う
カウンセリングを行うときは、絵を見ながら「絵からは○○というところが読み取れますが、どうですか?」と問いかけながら進めていきます。
「絵には○○と出ているので、あなたは○○ですね」と決めつけるのはNGです!あくまで、絵は読み取る材料のベースと考えましょう。
風景構成法の見方は、全体の印象から気になる部分をとらえる
描いているのは遠くから見た風景?近くから見た風景?現実のとらえ方がわかる
遠くから見た風景 | 現実を漠然ととらえている。自分の問題をひとごとのように見てしまう。 |
近くから見た風景 | 問題に焦点があたっている。視野が狭くなっている場合もある。 |
目立つところ、丁寧に描かれているもの、描かれていないものに注目する
濃く描かれているもの | 一番濃く、丁寧に描かれているものは、その人の課題を示していることが多い。そこにこだわりや、執着がある場合がある。 |
薄く描かれているもの | 疲れていたり、エネルギーレベルが落ちているものをあらわす。 |
色を塗ってないもの | 直面を避けているものをあらわす。 |
黒で描かれているもの | 否定的にとらえているものをあらわす。 |
画面構成でモチーフが多いのはどこか?
上下でどちらにモチーフが多いか?
画面上を精神性に関連するもの、画面下半分を身体性に関連するものととらえます。
画面上にモチーフが多い人 | 精神的なことに興味がある。高望みのこともある。 |
画面下にモチーフが多い人 | 身体を使って行動している。夢が持てない。 |
真ん中が抜けている人 | 真ん中は現実の領域をあらわす。真ん中が抜けているひとは、現実をとらえていない。 |
左右でどちらにモチーフが多いか?
画面の左側は、こころの世界=内的世界をあらわし、画面の右側は、社会とのつながり=外的世界をあらわすととらえます。
左側にモチーフが多い | 精神性・過去などこころの世界を中心に生きている。左へ行くほど母親的領域になる。 |
右側にモチーフが多い | 達成や未来など、社会でのできごとを大切にして生きている。右へ行くほど父親的領域になる。 |
4分割するとどこにモチーフが多いか?
画面左上を精神世界、画面右上を未来・行動、画面左下を過去・こころの傷、右下を愛情・スキンシップととらえます。それぞれの領域に何があるか?に注目します。
画面左上 | 精神世界 | 子どもの絵でここにモチーフがたくさんあると、精神的にきつい状態をあらわす。 |
画面右上 | 未来・行動 | 未来の領域に山があると、先が見えない状況で悩んでいることをあらわす。 |
画面左下 | 過去・こころの傷 | 画面左下に石がたくさんあると、幼少期の傷、母親とのトラウマがあったりする。 |
画面右下 | 愛情・スキンシップ | 画面右下に花がたくさんあると、「愛情がほしい」という願望の場合と「愛を大切にしている」場合がある。子どもの絵でここにモチーフがたくさんあると、精神的にきつい状態をあらわす。 |
描かれている風景の状況を確認する
季節はいつか?
春 | 行動するとき |
夏 | 成長のとき |
秋 | 収穫のとき |
冬 | たくわえ、休息をしたいとき |
時間は一日のいつごろか?
朝 | 新しいことが始まる予感。 |
夕方 | エネルギーが下がっていっている。 |
夜 | こころの内側の世界に入っていっている。エネルギーがない。 |
天気はどんな状態か?
晴れ | 気分が明るい、爽やか。 |
くもり | 悩みがある。雲の下にあるモチーフで、何について悩んでいるのかを見る。 |
雨 | 天からの恵みをうけとるとき。 |
雪・氷 | 感情を閉ざしている。感情を感じなくなっている状態。 |
風景構成法のモチーフの意味から、クライエントの課題に焦点をあてる
風景構成法のモチーフにはそれぞれ意味があります。クライエントの課題になる部分があらわれているところについて、対話しながらさぐっていきます。
川はエネルギーをあらわす
川はその人の持つエネルギーの状態をあらわしています。
川の流れの方向は、その人が過去と未来どちらに興味が向いているかをあらわす
右上に向かって流れている | 未来に興味が向いている。新しいことに興味を持っている。 |
左下に向かって流れている | 過去に関心が向いている。自分のこだわりにエネルギーを使っている。 |
川の流れの量は、その人の感情や意識していないエネルギーをあらわす
川が細い | 自分の感情をコントロールしようとしている。 |
川が太い | 自分の感情のままになってしまう。 |
川の描き方による意味
まっすぐな川 | 感情に左右されやすい、ストレートな人 |
蛇行した川 | あちこちに考慮する。感情の表現が不自然。 |
画面の下が川になっている | 精神的な不安定さをあらわしている。 |
川幅が広い | 川をはさんで二つの世界を持っている。 |
川が何本も描かれている | 感情が定まらないことをあらわす。 |
川で泳いでいる人がいる | 無意識にあるものを意識化するフェーズにきている。 |
川に橋がかかっている | こころの世界と、外の世界がひとつになることをあらわす。 |
山は、自分や他人への要求水準をあらわす
鋭角の山 | 理想・プライドが高い。「○○すべき」「○○しなくては」と思ってしまう。自分に厳しいこともある。 |
なだらかな山 | おだやかさをあらわす。人を育てる、育むことに興味がある。 |
山の頂上が画面からはみ出す | 全体が見えていない。理想が高すぎる。 |
茶色の山 | エネルギーがなく、疲れている。 |
田は労働・仕事・勉強をあらわす
面積が広い | 働き者。たくさん勉強をしている。 |
面積が狭い | 働くこと以外に興味がある。勉強以外をやりたい。 |
水がある田 | 仕事上の悩みがある。学校や勉強が苦手。 |
田に人がいる | 働くことが好き。仕事に熱中している。 |
稲がレ点で描かれている | 自分や人に厳しいところがある。 |
道は人生の道をあらわす
一本道 | 人生でやることが決まっている |
十字路、Y字路 | どちらに行ってよいか迷っている。人生の選択の時期。 |
道に石がたくさんある | 自分の人生に障害を感じている。人生で障害がないと生きていけないタイプ。 |
家は自分のこころの状態をあらわす
窓 | こころの窓がひらいているかどうかをあらわす。窓がない場合は、こころを閉ざしている。 |
ドア | コミュニケーションをあらわす。ドアがない場合や黒いドアは、コミュニケーションをとる気がない。 |
赤やピンクの屋根・煙突 | 怒りを感じている。 |
家のそばに人がいる | 家の問題を抱えている |
ビル | エネルギーがある場合もあるが、感情が石化している場合もある。 |
木は生命エネルギーをあらわす
針葉樹(とがった木) | 上昇志向のある人。厳しい人。 |
広葉樹(まるっぽい木) | 育み育てる人。 |
実がなっている木 | 実り・収穫の時期の場合もあるが、甘えたい現実逃避をあらわす場合もある。 |
森 | こころの内側の世界に入っていく。無意識の世界とコミュニケーションをとっている。 |
人のあらわすさまざまな意味
人数は何人か?
1人 | 自分自身をあらわす |
2人 | 対人関係の問題か、パートナーとの問題を抱えている |
3人 | 人間関係の調和をあらわす |
年齢はいくつくらいか?
実年齢より若い(子どものような人) | ①成長が止まっている ②実際の子どもと接している ③自分の過去を描いている場合、トラウマをかかえている場合がある |
実年齢より老けている | ①知恵を持った部分があるととらえる ②実際に疲れていて、あきらめの境地にある場合もある |
性別はどうか?
女性が女性を描く | 自分の性別を受容している。やさしさ、受け身の部分がある。 |
男性が男性を描く | 自分の性別を受容している。エネルギーが強い。 |
男性が女性を描く | 男性の中の女性的な部分をあらわす。 |
女性が男性を描く | 女性の中の男性的な部分をあらわす。 |
人をどのように描いているか?
顔を描かない | 対人関係でなにか直面することを避けている。 |
横向き・後ろ向きに描く | その人との直面を避けている。 |
寝ている・座っている人 | 行動できない。疲れている。 |
棒人間を描く | 自分を粗末にしている。自分の優先順位が低い。 |
花は愛ややさしさをあらわす
茎や葉のない花 | 愛情の基本が足りていない。 |
2本並んだ花 | パートナーが欲しい。結婚したい願望。 |
動物はシンボルの意味から課題をとらえる
犬 | 忠誠心や攻撃性をあらわす。 |
猫 | 甘えたい願望をあらわす。 |
魚 | その人のコンプレックスをあらわす。 |
鳥 | 精神性の高さをあらわす。黒い鳥が出てくると、黒は否定の色なので「夢をあきらめている」ととらえる。 |
石は自分にとっての障害をあらわす
何の近くに石があるか?で、その人は何に障害を感じているかがわかる。
川の周囲に石を描く | 自分の感情を恐れていて出してはいけないと思っている。我慢しがちな人。 |
画面右下に石をたくさん描く | パートナーや親からの愛情が足りないと感じている。 |
画面左下に石をたくさん描く | 親との愛情の問題がこころの傷になっている。 |
その他のモチーフの意味
画面左上の太陽 | 愛情が欲しい |
画面右上の太陽 | 目標がある |
画面真ん中の太陽 | 光がほしい |
黄色い太陽 | 甘えたい |
風景構成法とは?
風景構成法の歴史
風景構成法は、日本の精神科医の中井久夫さんが1969年に考案し1970年に発表した、絵画療法のひとつのやり方です。ユング研究所に留学していた河合隼雄さんが、日本に帰ってきて1965年に発表した箱庭療法を簡易化して、やりやすくしたものです。
風景構成法は現在でも論文が出ているなど、研究が続いている絵画療法です。
気になる方は、論文サイトJ-STAGEで、「風景構成法」と検索してみてください。いろいろ出てきて面白いですよ!
風景構成法のメリット
風景構成法のメリットは、言語化が苦手な人でも、自分のこころの状態がわかるということです。また、言語化が得意でも、実は自分の感情をないがしろにしている人にとっては、感情がわかるという効果があります。
まとめ
風景構成法のやり方7ステップと、絵の見方を初心者の人でもわかるようにまとめてみました。
自分でやってみたいという方も、今回の記事を参考にやってみてくださいね。自分の気づかなかったこころの状態に気づけるいい機会になることを願っています!