ユング心理学の元型をわかりやすく解説

ユング心理学

ユング心理学の元型(アーキタイプ)とは?子育てに活かす方法も紹介!

アーキタイプってはじめてききました。ガンダムの種類みたい…
元型(アーキタイプ)とは、心理学者のユングが考えたことばです。
この記事では、次のことがわかります!
・心理学に全然くわしくない人でも、ユングの元型のことがざっくりわかる!
・子育てで元型に気づいたら、どうしたらいいのかがわかる!
chihiro

元型(アーキタイプ)とは、人類全体が無意識に従っているこころの動きやパターン

ユングは、人類全体に共通なこころの動きを元型と呼んだ

元型は人間のこころにあらわれる「人類全体が無意識のうちに従っている、こころの動きやパターン」です。

人間には、誰から教えられなくても空想をしたり、神さまのイメージを生み出したりするこころの動きがあるとユングは考えました。それは、外からの刺激を受けて動き出すというより、人間の中にあらかじめあって、独立して動き出すものです。

chihiro
たとえば、初日の出を見たときに、なんとなく神さまがやってきたような、新しいことが始まるような嬉しい気持ちになりますよね。昼間のいつもの太陽とは、どこかちがう感じがすると思います。

このような、空想・神さまを生み出すようなこころの動きやパターンをユングは元型と呼びました。

元型とは、本能的な行動を導くイメージのことでもある

元型とは、本能的な行動を導くイメージのことでもあります。元型に気づかないでいると、その爆発的な力がパワーを持ち、社会現象となってしまうこともあります。

元型は、神話などを生み出す人類のファンタジーを共有するものでもあると同時に、無自覚でいると恐ろしいファンタジーを共有してしまうこともあるのです。元型に支配されないためには、元型のパターンを知っておくこと、そしてそれを意識の世界に入れてバランスを保っていくことが大事になります。

ユングは「元型は、無意識の中の集合的無意識を構成しているもの」と言っています。

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元型は、人生の必要な時期にあらわれ、こころのバランスをとる性質がある

元型はふだんは無意識の世界にありますが、人生の必要な時期にあらわれるとユングは考えました。これを元型の目的論的性質といいます。

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意識的な自分に、何かを教えるために元型的なイメージがあらわれるということです。

特に意識的な自分があまりに一面的になると、それを補う性質の元型があらわれ、こころがバランスをとろうとします。それは、こころの葛藤として大変苦しいものですが、自分のこころの成長のために必要だということなのです。

子育てに関係してくる重要な元型(アーキタイプ)を紹介します!

ペルソナとシャドウ:自分の「○○しなければならない」の押しつけに注意!

ユングのいうペルソナとは、社会の中でつける仮面のこと

ペルソナとはもともと仮面の意味ですが、現在では個性、人格をあらわすことが多いですよね。

しかしユングは、ペルソナを本来の仮面という意味でもちいています。どんな人も社会の中でつける仮面のことです。

先生なら先生としてのペルソナ、母親なら母親としてのペルソナ、それぞれの立場にふさわしい仮面をつけています。日本でいう本音とタテマエの「タテマエ」に近いかもしれません。人間のオモテとウラの「オモテ」とも言えます。

ペルソナは夢の中で、帽子や靴、洋服などのかたちであらわれることが多いです。

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私は一時期、「帽子を取り換える夢」や、「似合わない服を着ている夢」をよく見ていました。ペルソナ=たてまえとしての顔が、自分の本当の姿ではないよ、と夢が教えてくれていたんだなと思います。

ポイント

子育てをしていると、ペルソナは「○○しなければならない」という押しつけにつながることもあります。「子どもは学校に行かなければならない」「子どもは親の言うことを絶対聞くべきだ」というきちんとした部分としてのペルソナが強すぎると、子どもは反対の行動に出ることがあります。家族でバランスをとろうとしているのですね。子どもが問題行動を起こしたと感じられるときには、「自分のペルソナが強すぎるのではないか?」と振り返ってみるとよいかもしれません。

ペルソナは、あくまで自分が外に対してとっている態度です。ペルソナを自分自身だと同一視してしまうと、ペルソナにとらわれて危険な状態になってしまいます。ペルソナは自分の一部分だということに気づいて、子どもやパートナーと接していくとよいでしょう。

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シャドウとは起きているときの自分の影に抑圧された「自分の暗い部分」

人は誰でも起きているときは意識の世界にいて道徳的に生きようとしますが、その反対にこころの影として自分の暗い影が生まれます。ユングはそれを「シャドウ」と名付けました。

シャドウは普段、意識にのぼることなく無意識の世界に押しやられています。しかし、夢になると無意識の世界になりますから、夢の中に出てきてメッセージを送ってくるのです。

シャドウのイメージは、夢の中で同性の友人としてあらわれることがあります。他にも謎の黒い影や、悪い動物、泥棒、強盗、敵、悪魔、暗闇の月になってやってくることもあります。

ポイント

シャドウを悪いものとして、こころの中に押し殺してしまうと、どんどんシャドウが強くなってしまいます。そうするとバランスをとろうとして、自分の家族や職場にシャドウを表現する人が増えてくることがあります。自分の中のシャドウを認め、自分にも影の部分があるんだなと気づき、意識化し自分に取り入れていくことを、ユング心理学では大事にしています。

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アニマとアニムス:女性は自分の男性的なものとのバランスに気をつけよう

アニマは、男性の無意識に潜んでいる女性的なもの

アニマは、男性の無意識の中に潜んでいる、女性的なものです。

男性の夢の中では、シャドウは同性の男性があらわれますが、アニマは女性の姿であらわれます。

たとえば、ある男性Bさんが、仕事場で「男らしいリーダーシップをとった上司」をペルソナとして求められているとします。本人もそれが自分の性格だと思っていると、無意識の中に隠している弱さが、女性像として夢にあらわれたりします。

アニムスは、女性の無意識に潜んでいる男性的なもの

アニムスは女性の無意識に中に潜んでいる、男性的なものです。

女性の夢の中に、シャドウは同性の女性があらわれますが、アニムスは男性の姿であらわれます。

たとえば、ある女性Cさんが、家庭で母親として「やさしい母親にならなければならない」と思っているとします。本人も日常はそれが当然と思っているのですが、無意識の中では男性的なものが大きくなり、夢に例外を許さない頑固な男性が出てきて怒っていたりします。

アニムスは女性にとっての想像上の理想の男性でもあります。夫の中に理想のアニムスが見いだせなくなると、息子にアニムスを見出し始めるときがあります。そうなると、息子への依存というかたちになり、息子は「親の理想の男性を生きる」というつらい立場をとることになってしまいます。

女性は、自分の中のアニムスに気づくことが大事です。アニムスが暴走しすぎているなと思ったら、自分の中の女性的なものを認めてあげるときがきているのかもしれません。

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グレート・マザーとオールド・ワイズマン:自分のパワーを自覚しよう

グレート・マザー(太母)

グレート・マザーと呼ばれる太母(たいも)は、あらゆるものを育てる母なるもののイメージです。いっぽう、こころの中の太母に無意識でいると、偉大な力が本能的に行動をとり、あらゆるものを吞み込んでしまうという恐ろしい側面もあります。

太母は夢の中で、老婆、魔女、怪獣、ドラゴン、月、渦巻きもよう、迷路、海、洞窟などのかたちであらわれることがあります。美しい女性や乙女の姿であられることもあります。

どちらにしても現実の母親というよりは、「母親的な圧倒的なパワー」を感じさせるものなのです。

chihiro
私はずっと、自分の母のことが好きになれず困っていました。母は、特に育児放棄をしていたわけでもないのに、なぜか好きになれなかったのです。それがユング心理学を知ってから、「私がグレート・マザーを母に投影していたのだ」と理解できました。本物の母が、本当に怖いというよりは、母なるパワーを恐れていたのでしょう。

ポイント

子育てをしていると、母親は自分のグレート・マザーとしての権威に気をつけなければなりません。グレート・マザーに無自覚でいると、子どもを支配しようとしたり、いうことをきかせたりしたくなる心の動きがあるのです。子どもも、母親にグレート・マザーを投影します。反抗期は、本当の母親に反抗しているというよりは、グレート・マザーからの力から脱しようとする心の動きなのです。親としては、「私は悪い親なのかな」と悩みすぎるより、子どもの心が成長しようとしているのだと見守ってあげることが大切です。

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オールド・ワイズマン(老賢人)

オールド・ワイズマンと呼ばれる老賢人は、男性の成長の到達点で、あらゆる社会的な野望を乗り越えた仙人のような存在です。老賢人の存在に無意識でいると、男性は知らずに権力をふりまわし、闘争や破壊の衝動にかられることがあります。これが行き過ぎると、子どもを自分の思い通りに支配したがる横暴な父になったりします。

また、女性から見ると、老賢人は「いつまでも頼っていたい依存の対象の男性」となることもあるので要注意です。

老賢人は夢の中で、老人、仙人、稲妻、雷鳴、嵐になってあらわれることがあります。

それ以外の元型

上で紹介した以外にも、自我、自己(セルフ)、トリックスターなどの元型をユングは見出しました。

子育てで、自分の元型に気づいたらどうしたらいいの?

まずは元型の存在に気づくことが大切

まずは、自分の元型の存在に気づいてあげることが大切です。

子育てをしていると、どうしても親としてきちんとしなければならないというペルソナが強くなることが多いですよね。そのときに「これは、私の全てではなく、ペルソナであり一部なのだ」と気づくことが大切です。

また、母親になると、子どもを自分の思い通りにしたいというグレート・マザーが出てくることも多いです。グレート・マザーは、子どもを慈しみ無償の愛で育てる源泉でもありますが、無償の愛と思いつつ、つい「なんで言うことをきいてくれないの!」と怒ってしまうこともあるでしょう。そのときに「あ、私の中のグレート・マザーが強くなっているんだな」と気づいてあげましょう。

仕事をしながら子育てをしていると、「私も男性のようにバリバリ働いて世間的に認められなければならない」と思うことも多いでしょう。(私はまさにこの沼にはまっています…)それは、「自分の中のアニムス(女性の中の男性性)が認められたがっているんだな。」と私は考えるようにしています。

元型の存在に気づいたら、自分をみつめなおすチャンス

元型の存在に気づいたら、それに支配されすぎないことが重要です。一歩高い視点から自分を見つめなおして、自分の中のバランスをとっていけるようになるといいですね。

まとめ

ユングの元型とは、人類全体が無意識のうちに従っている、こころの動きやパターンです。また、元型は本能的な行動を導くイメージのことでもあります。

元型の中でも、「ペルソナ」や「シャドウ」は比較的想像しやすく、自分にもそういうところがあるなと感じる方も多いのではないでしょうか。子育て中だと、「グレート・マザー」と日々向き合う毎日になるかと思います。

ユング心理学はかなり奥が深いですが、自分を振り返るのに使ってみるととても役に立つなと感じています。あなたも、自分が理解できるところから子育てや生活に取り入れてみませんか?

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