ユング心理学には、「タイプ論」という人の性格を理解しやすくなる座標軸のようなものがあります。「タイプ論」では8つのタイプを説明していて、親である自分と子どもの性格がどこに位置するかを考えると、子育てがちょっとラクになります。
この記事では次のことがわかります。
- 子どもが何タイプであるかがわかる!
- 子どもの傾向からどう接すればいいかがわかる!
ユング心理学のタイプ論とは、人がどのように意識してふるまうかを8つに分けたもの
ユング心理学のタイプ論は、自分やまわりの人の性格を理解しやすくするための座標軸です。「あなたは、○○タイプだから、こうです」と分類するためのものではありません。
「今、自分が使っているのはこの機能だから、別の機能も意識しよう」というように、使っていない機能を意識しながらバランスのとれたこころを目指していくためのものです。
ユングは、2つの基本的な意識の態度「内向・外向」と、4つの意識の機能「思考・感情・感覚・直観」を組み合わせて、8つのタイプがあると考えました。
2つの意識の態度と、4つの意識の機能を組み合わせると、8つのタイプになります。
タイプ論では、まず基本的な意識の態度が「内向・外向」かをとらえる
内向型か、外向型かは「自分を基準にしたときに、自分の外側の世界と内側の世界のどちらにより関心をもつか」で考えます。
- 内向型の人を動機づけるのは、内なる世界で、主観的な要因になります。
- 外向型の人を動機づけるのは、外の世界で、客観的な要因や関係になります。
また、内向と外向のバランスは人によって違い、どんな人でも自分の割合を持っています。
内向・外向について 詳しくはこちら
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内向型の人と外向型の人は、お互いに理解しにくいところがあり、自分が正しいと思ってしまうと反対のタイプの人に失礼な態度をとってしまうことがあります。
4つの意識の機能「思考・感情・感覚・直観」とは?
同じ内向型、外向型でも、人が何かを判断するときの基準は異なることがあります。ユングは、意識の機能を「思考・感情・感覚・直観」の4つのタイプに分けて考えました。人は、4つのうちのどれか得意な機能を使っていることが多いのです。
自分なりの理屈を大切にする「思考・感情」機能
「思考・感情」機能は、自分なりの理屈を大切にしています。自分の経験によってなにかを判断する機能でもあります。
- 「思考」機能:与えられた内容に対して、客観的な法則にしたがって、見たものを概念的に整理する機能のこと
- 「感情」機能:与えられた内容に対して「好き・嫌い」「快・不快」など主観的なものさしで判断する機能のこと
「思考・感情」は対立関係にあり、どちらかの機能が強いとどちらかの機能が未発達となります。
- 親が「思考」タイプで、子どもが「感情」タイプの場合→親は「なぜ○○なの?」と論理的に聞きがち。理由を聞かれても、子どもは言葉で答えるのが苦手なので、一方通行になってしまうことも。
- 親が「感情」タイプで子どもが「思考」タイプの場合→親は「なぜ人の気持ちがわからないの?○○されてどんな気持ちだと思ってるの?」と聞いても、子どもにはひびかないことが多い。
とにかくそのままの知覚を大切にする「感覚・直観」機能
「感覚・直観」は、とにかくそのままの知覚を大切にしようとします。理屈や筋道ではなく、自分の中に何かを取り入れたものを判断の基準にします。
- 「感覚」機能:与えられた外からの刺激を、そのまま受け取る機能
- 「直観」機能:ものごとの背後にある可能性を知覚する機能
「感覚・直観」も対立関係にあり、どちらかの機能が強いと、どちらかの機能が未発達となります。
- 親が「感覚」タイプで子どもが「直観」タイプの場合→親は根拠なく行動する子どもが理解できなくて「もう少しまわりを見て行動しなさい」と言いたくなりがち。
- 親が「直観」タイプで、子どもが「感覚」タイプの場合→親は子どもがとにかくいろいろな感覚に敏感なので「そんなに気にしすぎなくても○○なのに」と先回りしたくなる。
子どもの8つのタイプをわかりやすく解説
2つの基本的な意識の態度「内向・外向」と、4つの意識の機能「思考・感情・感覚・直感」を組み合わせると、8つのタイプになります。それぞれを解説していきます。
思考タイプの子ども
「思考」機能は、与えられた内容に対して、客観的な法則にしたがって、見たものを概念的に整理する機能のことでしたね。
たとえば、新しい勉強を始めるときに、思考タイプの子どもは「これが何の役に立つのか」や「この勉強と前に習ったことの関係性は何なのか」が気になります。
思考とは、構成力、判断力、発表力などにかかわっています。思考タイプでも反応が遅かったりためらいがあって、一見思考タイプに見えないこともあります。
思考タイプの子どもは、補助機能として「感覚」か「直観」を意識してみるとバランスをとりやすくなります。よく観察してみると、「感覚」か「直観」を使って何かを判断していることが多いはずです。
内向的思考型の子ども
内向的思考型の子どもは、外側の客観的事実よりも、自分の主観的な考えを深めていくことに興味があります。もともと自分の外側の人とかかわるのが苦手なので、一見冷たくみえることもあります。
また、集中力があり一つの考えをじっと長く考えるので、一見なにも考えていないように見えることもあります。感情の表現が豊かではないので、親からみると心配なこともあるかもしれません。そんな時は、無理に苦手な感情を身につけさせようとするより、感覚や直観について気づきを与えてあげるのがいいでしょう。
注意ポイント
内向的思考型の子どもは、感情がうまく表現できないことを大人に注意されることが多いです。このタイプの子どもが感情をコントロールするのはとても難しいということを理解してあげるといいでしょう。
外向的思考型の子ども
外向的思考型の子どもは、新しい独創的な考えよりも、一般に受け入れられる考えをつくりあげるほうが得意です。知的で論理的に物事を理解することが得意なのですが、客観的な事実を大切にするので、感情をどこか置き忘れているようなところがあったりします。
そのため、例外的な態度を許さないことがあったり、感情が未発達なため爆発的に怒ってしまうことがあります。
注意ポイント
外向的思考型の子どもは、親や先生の期待をにないすぎてつぶれてしまうこともあります。私は友人にこのタイプが多いので、過度な期待は禁物だなと感じます…
感情タイプの子ども
「感情」機能は、与えられた内容に対して「好き・嫌い」「快・不快」など主観的なものさしで判断する機能のことでしたね。
たとえば、新しい勉強を始めるときに、感情タイプの子どもは「この先生は面白いな」とか、「これは嫌いだな」などで判断します。感情タイプの子どもは「感情的」な子どもを指すのではなく、人とのかかわりの間で、情愛的なものをしみじみと感じ取れる子どものことです。なんとなく優しい子で、まわりの人が気づかないほど感情の流れが自然です。
感情タイプの子どもも、補助機能として「感覚」か「直観」を意識してみるとバランスをとりやすくなります。一方、苦手な思考を押し付けると、急にその子の輝きを失ってしまうこともあります。正反対の性質を急いで育てようとしないように気を付けましょう。
内向的感情型の子ども
内向的感情型の子どもは、自分の主観に基づいた感情によって、ものごとを判断します。自分が好きで気の合う仲間とだけ付き合うことを好みます。
外向的感情型の子ども
外向的感情型の子どもは、自分の「好き」や「嫌い」について、「そう感じることが正しいから」と、客観的に求められる基準をもとに適応的に行動します。客観的に求められる基準にもとづいて行動するので、大人受けがいい子どもであることが多いです。
注意ポイント
特に女の子は、大人から「外向的感情型」を求められてしまうことが多いです。にこにことしていて、大人が求める子ども像を「そうなりたい」と思っている子どもだからです。しかし、このタイプではない子に無理やり「外向的感情型」にさせようとすると、子ども自身が苦しくなってしまいます。大人は理想の子ども像の押しつけに要注意!ですね。
感覚タイプの子ども
「感覚」機能は、与えられた外からの刺激を、そのまま受け取る機能でしたね。ものごとをよく観察するので、思考タイプと思われることもありますが、もともと思考が強いわけではありません。
感覚タイプの子どもは、美しいものや心地よいものに敏感です。少し大きくなると、食事の味のちがいなどもすぐに気づく、なかなかうるさい子どもになります。観察することや、まねることが好きで、食事の味や着るものの肌触りを気にします。
感覚タイプの子どもは、補助機能として「思考」か「感情」を意識してみるとバランスをとりやすくなります。
内向的感覚型の子ども
内向的感覚型の子どもは、「神経質」「感受性がつよい」と言われる子に多いです。HSCの子どもも、ここにあてはまるでしょう。自分の外側で起こったことに対して、自分の内側で起こる感覚に刺激をうけやすいです。
たとえば、新しい勉強を始めるときに、「内向的感覚型」の子どもは実は全然ちがうところを見ていたりします。「今日は先生の服は縞模様だな」とか「まわりの音が大きいな」「電気がまぶしいな」など、いつもと違う知覚に敏感になっていたりします。
外向的感覚型の子ども
学校で一番適応しやすいのが、外向的感覚型の子どもです。学校のルールのような、自分の外側の世界の基準にのっとって行動することが得意なのです。感覚機能がすぐれているので、先生がやっていることを見たまま受け入れて行動できるのがこのタイプです。
直観タイプの子ども
「直観」機能は、ものごとの背後にある可能性を知覚する機能でしたね。
直観タイプの子どもは、新しい勉強を始めるときに教科書の内容よりも「こんな風にこのアイデアを使えないかな?」と、少し先のことを考えていたりします。アイデアを考えるのが大好きで、面白い子どもです。素早く総合的な判断を下すので、思考タイプと思われることもありますが、構成的に積み上げたものではない場合、直観タイプの子どもです。
直観タイプの子どもはどうしても空想や未来など違う世界に想いが行きがちなので、補助機能として「思考」か「感情」を意識してみるとバランスをとりやすくなります。
たとえば、「思考」として順を追ってゆっくり考えたり、「感情」として他人をこころを通わせることに時間を使うのも意味があるということがわかってくると、やっと感覚が発達してきます。
内向的直観型の子ども
内向的直観型の子どもは、自分の内部でわきおこるさまざまなイメージを追います。現実よりもファンタジーに没頭するタイプの子どもです。親から見ると、理解しにくい子どもであることが多いですが、夢見る子どもなのです。
食事の時も、味わって食べるよりも、空中を見つめて考え事をしていることがあります。
外向的直観型の子ども
外向的直観型の子どもは、自分の直観を外に向け、自分の可能性を外側の世界で実現していくことに関心があるタイプです。思いつきで行動することもあるので、単なる夢想家で終わることもあります。
まとめ
ユング心理学のタイプ論は、自分やまわりの人の性格を理解しやすくするための座標軸です。
「今、自分が使っているのはこの機能だから、別の機能も意識しよう」というように、使っていない機能を意識しながらバランスのとれたこころを目指していくものです。
ぜひ、自分のタイプや今使っている機能と、子どものタイプや今使っている機能を意識してみてください。そして、子どもには無理して反対の機能を開発するよりも、メインの機能を軸に、補助機能を育てることを意識してみましょう。
親自身は、自分の苦手な劣等機能を意識して子どもとつきあうと、新しい自分が発見できますよ!